皆さんは、パソコンを処分するとき、どのようにして処分していますか?
実は、パソコン内のハードディスクはフォーマットしただけではデータは完全に消えてはおらず、見かけ上消えているように見えているだけで、データは残っているんです。
HDD内の記録情報構造
説明の前に、ハードディスクの構造を簡単にお話ししましょう。ハードディスク内の記録情報構造は、「ファイル管理領域」と「実データ領域」に分けて記録されています。
ファイル管理領域には実データのファイル名や実データがどこに記録されているのかの位置情報、ディレクトリ名、作成日等の情報が格納されています。イメージはインデックス・目次のようなものです。一方、実データ領域には実際のデータが記録されています。
例えば何かのデータを取りに行きたい、となったとき、ハードディスク内では最初に実データへは飛ばずに、まずファイル管理領域にアクセスし、ファイル管理領域内を探して見つけたその情報を基に、実データ領域に飛んで、目的のデータを読み取るという仕組みになっています。
ちなみに、ハードディスク内の円盤(ディスク)のことをプラッタといい、データはプラッタに書き込まれています。
HDDはフォーマットしてもデータが残っている
皆さんはファイルやフォルダを削除するとき、ゴミ箱に捨てて消去したり、HDDボリュームをフォーマットしたりしたことがあると思いますが、この時ハードディスク内でどのような処理をしているかというと、ファイル管理領域の情報だけを消去しているんです。インデックスだけを消してしまえば、実データ領域にはアクセスできなくなるので、消去したものとみなしてファイルを管理しています。
このようなファイル管理システムのおかげで、実データ領域のデータは、ファイルを削除しても、厳密には、データが上書きされたりしない限り、書き込まれたままの状態で本当は残っています。
ここまでが、簡単なハードディスクの仕組みのお話でした。
情報漏洩の危険性(セキュリティ)
パソコンを処分するとき自分の個人情報が記録されているデータを見られたくないので、ファイルをゴミ箱に捨てて消去してからパソコンを粗大ごみに出すか、フォーマットしてから粗大ごみに出したりすると思いますが、上述の通りハードディスクの構造上、個人情報や重要なデータは残っています。このままでは、削除したつもりのファイルを復元されてしまう可能性があります。
もちろん故障して突然動かなくなったハードディスクも、同じ理由で個人情報やデータは残っていて、個人情報が復元されて漏洩してしまう可能性があります。
そうならないために、情報漏洩をしないようにする対策、セキュリティについてお話をしていきます。
データ復旧サービス
本筋とはそれますが、HDDの構造上データは残っている状態なので、専門の技術と特殊な機材があればデータの復旧は可能です。そのためHDDデータ復旧をサービスにしているデータサルベージ業者もあります。興味があれば「ハードディスク復旧サービス」とかで検索してみてください。もちろん故障して読み込めなくなったハードディスクも、専門の業者に依頼すればデータを復旧させることができます。
HDDのセキュリティを考慮した捨て方
「それじゃあHDDは、情報漏洩が怖くて処分できないじゃん」と思われる方もいると思いますが大丈夫、ちゃんとHDDの廃棄方法についてのガイドラインがあります。
一般社団法人パソコン3R推進協議会のWebサイトでは、データ消去の方法について指針が提示されていて、
・専用ソフトウェアでデータを消去する
・専用装置でデータを消去する
・HDDを物理的に破壊する
のいずれかの方法で、データを消去することを推奨しています。このうち2番目の「専用装置でデータを消去する」は、一般家庭で片手間にちょこちょこっとするのは無理なので、1番目と3番目を中心にお話してゆきます。
専用ソフトウェアでデータを消去する
専用ソフトウェアでデータを消去するというのは、ハードディスクの消去に特化したソフトウェアを用いて、空いている実データ領域に、ランダムなデータを書き込んで上書きしてしまうという方法です。
専用ソフトウェアでデータを消去する最低水準
データを新たに書き込んでしまえば、万が一HDDが他人の手に渡ったとしても、データを復旧させることはほぼできません。情報漏洩の対策になります。
しかし、ただ単にデータを書き込んでいいわけでもなく、HDDのデータ消去を行うなら、官公庁などでも採用される「DoD5220.22-M方式(米国国防省水準)」以上のレベルの消去手順で行うことが、より確実にデータを消去してくれるので、米国国防省水準が推奨されています。
現在最高水準のデータ消去方式は、35回上書きをしてデータを削除する「グートマン方式」というもので、この水準でデータ消去ができるソフトウェアなら、さらに安心です。
ですが難点を言えば、35回上書きするので相当な時間が掛かります。時間を取るか情報漏洩のリスクをとるかの、トレードオフなので、どれくらいが自分に適しているかバランスよく選択してください。
ではどのような専用ソフトウェアが良いのかというのは、最低でも米国国防省水準で書き込み消去ができるソフトウェアであれば何でもいいと思います。
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とりあえずリンク貼りましたが、こういうソフトウェアがあるというのを見て欲しいというだけで、オススメではありません。
コマンドを使ってデータを消去する
コマンドを使う方法は少し難しくて技術が必要ですが、Windows10の機能に標準でついているので、無料でデータの消去を行うことができます。
詳しい内容は別ページへ→「【cipher】【shred】コマンドを使ってハードディスクの内容を完全消去する」
HDDを物理的に破壊する
次はHDDを物理的に破壊する方法の紹介です。文字通りHDDをハンマーやドリルで破壊します。
目的としてはHDDを粉々にするまで破壊する必要はなく、実データ領域に記録がされているプラッタを物理的に破壊してしまえばいいことになります。内部を少し破損させただけでも、データの読み取りは困難になります。
ドリルで穴をあける
ドリルで穴をあける方法は、ドリルでハードディスク内部にあるプラッタに穴をあけ、破損させる方法です。ハードディスクの裏側を見るとプラッタの中心が分かるので、中心から少し離れたところの数か所に穴をあけて破壊します。
ドリルは必ずプラッタを貫通させることに注意です。プラッタがない箇所に穴をあけた場合はデータの復元が可能になってしまいます。
メリットとしては、穴をあけるだけでいいので早くて楽です。ある程度身の周りのモノだけで作業できるので、気楽に始められます。
デメリットは電動ドリルなどやや特殊な工具が必要です。音が結構うるさいです。ハードディスクは硬いので、ドリルの刃が折れて怪我をする可能性があります。削ったあとの金属片も危ないです。
DIYが趣味の方なら電動ドリルなど工具類は持っているでしょうが、一般家庭全員が電動ドリルを持っているかどうかは疑問です。持っていない場合は購入する必要があり、HDDを捨てるために電動ドリルを購入するというのはどうなのか微妙です。
オススメではありませんが、とりあえず必要そうな工具類のリンクを貼っておきます。
手で分解する
手で分解する方法は、HDDを分解してプラッタを取り出して、プラッタに穴を空けたり折り曲げたりして廃棄する方法です。
HDDは鉄の箱の状態ですが、ねじ止めがされた状態で鉄の箱になっています。なので、ネジを回して取ってしまえば分解することができます。HDDの作りは比較的単純です。
注意点としては、HDDのメーカーによって、ネジ穴が一般的なプラスネジではなく、六角形「*」のような星形のネジ、トルクスねじが利用されているので、専用のトルクスドライバーが必要になります。
トルクスドライバーを用意して、HDDの蓋を開け、プラッタを取り出し、プラッタに穴を空けたり、折り曲げたりして読み込めなくした後、各自治体のごみ処理に従った方法で処分します。
このとき、ガラスや金属片が飛びますので、十分に注意してください。
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HDD破壊サービス業者に依頼する
次はHDD破壊サービス業者に依頼する方法です。HDDの破壊をサービスに行っている業者に、直接HDDを持ち込んで、専用の機械でその場で破壊してもらう方法になります。
メリットは電動ドリルで穴を空けたりトルクスドライバーを購入する手間が無くなることです。自分でやるとケガの危険性もありますし、その点、業者に頼めばサクッと終わります。
デメリットとしては、サービス業者ということなので有料です。また、HDDを破壊してくれる店舗は東京または大阪近辺しか、サービスを取り扱っているところがないので、地方に住んでいる方はお店までの電車賃・交通費がかかるのがデメリットです。
主な店舗はこちらになります。
ソフマップ ハードディスク破壊サービス
1台あたり1,020円(2020年現在)
PCコンフル 秋葉原本店
こちらはなんと無料!!(2020年現在)
業者に依頼する前に必ずホームページでHDD破壊サービスをしてくれるか確認してから、店舗へ行くようにしてください。
ハードディスクを破棄するにはいろいろな方法があるとわかりました。私個人としてのハードディスク処分方法は、コマンドでランダムに書き込んでから、手で分解して粗大ごみへ、という感じですかね。
以上、ハードディスクを廃棄処分する方法でした。